日蓮大聖人様のお言葉
平成30年5月
- 『忘持経事』
- 建治二年(1276)年
- 聖寿 五十五歳
- 著作地 身延山
【解説】
日蓮大聖人様の最大で篤信の檀越である富木常忍(ときじょうにん)公は、母親の死後、遺骨を抱いてはるばる身延山に赴き、お祖師様の御回向をいただきました。無事に埋葬を終えての帰り、常忍公は自身の経本を身延山に忘れて来てしまいました。この文は、お祖師様が常忍公に経本を届けた時に副えられたお手紙の一節です。
常忍公の母親の霊魂は、お祖師様の御回向によって霊山浄土に成仏し、遺骨もこの世の浄土である身延山に納められて、霊魂も肉体もともに御本仏様のもとに導かれたのです。
「歓喜 身に余る」とは、母親の魂の成仏のよろこびが常忍公自身の魂のよろこびとなることです。「心の苦しみ忽ち息む」とは、母親の魂が死を恐れる心・生への執着・病の苦しみなどから解き放たれたことで、常忍公も悲しみと苦しみから解放されることです。御題目の御回向は、死者の魂も生きる者の魂もともに救済してくれるのです。
(平成30年5月)