日蓮大聖人様のお言葉
令和4年1月
- 『松野殿女房御返事』
- 弘安二年(1279)年
- 聖寿 五十八歳
- 著作地 身延山
【解説】
松野殿は松野六郎左衛門尉のことで、父の松野入道からの日蓮大聖人様の熱心な信者の一人です。駿河の国(静岡県)庵原郡松野の住人で、お祖師様の直弟子日持上人の兄に当たります。
松野殿女房はその妻であり、子どもを亡くしたことで夫妻でお祖師様に入信し、深い悲しみを隠すことなく赤裸々におすがりし教えを受けました。松野殿女房は女性らしく細やかにお祖師様の生活を気遣い、種々のものを供養したことでも知られています。
このお手紙はそのご供養に対する礼状の一節であり、服を着ることが出来なければ冷たい風に身は凍え、食べる物が無ければ命を持つことは出来ないという意味です
衣服も食べ物も自分が生きながらえるためには欠かすことの出来ないものですが、同時に他の多くの人の手を経て多くの物との関わりを通じてもたらされることを忘れてはなりません。
私たちは、何事に於いても一人で生きてゆくことは出来ません。必ず他の多くの人や物と支え合い助け合ってこそ生活が成り立っています。そのことを自覚することによって感謝の心が生まれ、さらに自分の生業(なりわい)を通じて他のために尽くすことのよろこび、すなわち生き甲斐を感じることが出来るのです。
(令和4年1月)